当院の治療指針
当院の治療指針
私たちの「心」の健康は、脳と体の両方に支えられています。
そのため、あなたの「心・人格」を守るためには脳と体の両方をしっかり診る技術が必要です。
当院では、あなたの「心・人格」を守るために、「脳を守る精神科」と「体から治す心療内科」、その両方を心身一如として扱う歴史を持つ「漢方治療」、
それらすべての技術を最大限に発揮して治療にあたります。
何らかの不調を抱えている時、人間は本来の人格や機能を発揮できなくなります。例えば、風邪をひいた時に、誰でも普段の思考力や判断力を発揮できなくなった経験があるでしょう。当然、ストレス環境下にある時や、何らかのメンタル疾患を発症している時は、風邪どころでなく脳機能が低下します。その結果として、人格的にも能力的にも本来のその人の力を十分発揮できなくなってしまうのです。しかも、やっかいなことに、そのような不調は外からは分かりにくく、本人も周囲もやる気や努力不足と認識してしまうことがあります。
当院では、「心」の健康が、脳と体、両方のコンディションが整っている上で成り立つことを深く理解して対応いたします。そして、心の底から「あなたがいつもの自分らしい自分を発揮できないのは、あなたのせいでなく病気のせいです。本来の姿を取り戻せるよう、一緒に治療していきましょう」とお伝えいたします。
先に触れた通り、「本来の心・人格性の発揮」は健康的な脳機能や身体コンディションが保たれていて初めて成り立つものです。そのため、「心」を守るには、脳機能や心理面に焦点を当てた治療を行う精神科、身体的な不調から心の健康へアプローチする心療内科、そのどちらの視点も内包し、部分的な病気の原因だけでなく体全体に生じるバランスの崩れを把握して治療する漢方治療、これらすべての治療分野における十分な知識と経験が必要です。
当院院長は、精神保健指定医の資格を有し、気分障害の論文投稿、日本東洋医学会学術総会での座長・演者及び一般演題投稿、日本心身医学会学術総会ランチョンセミナー講師などの実績があり、各分野での研鑽を重ねております。熱意と誠実さをもって治療に取り組み、皆様の「心・人格・人生」を守るお手伝いをいたします。
やはり、最初に重要なのは正確な診断です。主訴や経過から診断を類推し、診断基準を満たすかどうかを判定して、得られた診断に対して国内外の治療指針やガイドラインを遵守して治療を行います。当たり前のことではありますが、それを実践するにはしっかりした教育機関での研修・臨床経験が必要です。
さらに実際のクリニック診療を行う上で大事なポイントは、「病気の中間地点」や「疾患の併存」をどのようにとり扱うかにあります。実際の患者さんの状態は様々にあり、判断に迷わざるをえない病態を日常的に見かけます。例えば、「正常と病気の間」、「適応反応症とうつ病の間」、「うつ病と双極症の間」、「気分障害と不安症の間」、「月経前症候群と月経前不快気分症の間」、「健常発達と神経発達症の間」、「ADHDとASDの間」、「各疾患と神経発達症の間」などですが、実際にはもっとあります。各疾患の特徴を熟知した上でさらに曖昧な病状に対して適切な判断と治療を行う技術が必要です。そして、それができて初めて「不要な薬物療法を行わない」ということが真に行えると考えております。
このように決して簡単ではない判断を行うため、精神科・心療内科は基本的に同一主治医による継続治療が必要なのです。
診断・治療において近年重要視されるようになった「Measurement Based Care:MBC」という考え方があります。きちんとした計測・数値化・定量化を行うことにより、患者さんと医療者の共同意思決定(Shared decision making:SDM)を円滑にして治療を組み立てる方針のことです。
MBCはもちろん考え方として適切ですが、それだけでなく実践することにより病状の改善に寄与することが分かってきました。そのため、当院でも積極的にMBCへ取り組んでいます。病状や治療効果の判定に加えて、心電図や採血検査による身体的なリスク評価も大事です。当院では、定期的に、または必要に応じて病状・認知機能・身体面などの検査を提案いたします。
ご存知の方も多いと思いますが、上記系統の薬剤は依存性や認知機能低下のリスクが指摘されております。当然、ガイドラインやエキスパートコンセンサスに従った使用は問題ありません。しかし、安易な投薬から常用量依存に陥り、本来必要のない継続使用が見受けられるのも事実です。当院では、ベンゾジアゼピン系薬剤を極力使用せず、安全性の高い睡眠薬や漢方治療を先に行うようにしております。漢方治療のみで不眠・不安が改善する方もみえますし、もし睡眠薬を用いても依存性のないものであれば後に中止しやすいです。また、ベンゾジアゼピン系の薬剤をもともと使用していた方でも、ゆっくりと安全性の高い薬剤へ変更していくことも可能です。不眠・不安、脱ベンゾについても、当院へ気楽にご相談ください。
各疾患の説明については精神科紹介ページに詳細がありますのでそちらをご覧ください。
また、漢方治療についても漢方内科のページに詳細がございます。
適応反応症に対する西洋薬によるアプローチは限られています。かつては抗不安薬が用いられましたが、ベンゾジアゼピン系薬剤であるため推奨されなくなりました。しかし、漢方薬のいくつかには、ストレスと密接に関係する脳内グルタミン酸伝達を安定化させる効果があることが分かっており、臨床研究で不眠やストレス病態への有用性が確認されています。
抗うつ剤は、脳内伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン、ドパミンの分泌レベルが低下している病態を想定して使用します。うつ病や不安症、強迫症がその適応となります。
双極性障害には、大脳辺縁系内の異常な発火シグナルを想定して抗精神病薬や気分安定薬を用います。持続性注射剤という治療手段があり、月1回の筋注で病状安定を図ることができます。
ADHDは、脳内のノルアドレナリンやドパミンの分泌レベルが低いと想定されるため、それらの濃度を高める薬剤を用います。また、それらの伝達物質に直接作用せずに脳内の電気シグナルを増幅する薬剤もあります。
統合失調症は脳内で過剰にドパミンが分泌される病態が想定されています。そのため、ドパミン受容体(D2受容体)を遮断する作用が主となる抗精神病薬で対応し、幻覚や妄想など精神症状を抑制します。
認知行動療法(CBT):患者の思考パターンや行動を改善し、精神的な負担を減らすための療法です。
支持的精神療法:患者さんが抱える感情や問題について話し合い、ストレスや不安を和らげるための方法です。
当院では、院長による長時間のカウンセリング対応は行っておりませんが、院長自身は一般的な支持的精神療法だけでなく、認知行動療法(弘前大学精神科講座)や力動的精神療法(精神分析的な心理療法:桜クリニック所属時に名古屋精神分析セミナーにて)についても学んだ期間があります。心理的な悩み・問題を自覚なさっている方も、気楽にご相談ください。