眠れない
眠れない
精神科・心療内科は多くの心身不調を取り扱いますが、「不眠」は特に重要な症状です。なぜなら、「不眠」はメンタル不調の方の90%に出現すると分かっているからです。
そのため、多くの方が「不眠」について睡眠外来の受診を考えられますが、最初に精神科・心療内科へ相談することも決して間違っていません。睡眠外来はどちらかと言うと、睡眠時無呼吸症や過眠症、ナルコレプシー、概日リズム障害など比較的専門性の高い睡眠関連疾患に対応する診療分野です。一般的な「眠られない」については、精神科・心療内科の対応で始めた方がよいかもしれません。
当院院長は、前勤務先の仁愛診療所が睡眠外来を併設しており密に連携をとってきた経験がございます。そのため、睡眠外来の対応が必要であればそう判断できますし、近隣に信頼できる睡眠外来クリニックを存じております。「不眠」については安心して当院へご相談ください。
不眠と一言で言っても入眠困難、中途覚醒、浅眠、早朝覚醒、起床困難、睡眠時間の短縮、睡眠充足感のなさ、など様々な状態があります。また、原因も様々にあるため慎重な判断を要します。
・メンタル不調と関連しない原発性不眠
・眠れないことに敏感になりすぎた結果の不眠(神経症性不眠)
・ストレス反応性に出現した不眠
・気分障害や不安障害など、精神疾患が原因の不眠
・神経発達症の特徴に関連する不眠
など
治療にはそれぞれの原因に合った対応が求められますが、まずは「不眠」の程度をしっかり把握するアセスメントが大事です。不眠の程度・頻度と日常生活への影響を把握します。
治療の基本は睡眠衛生指導です。アセスメントによって、睡眠衛生指導のみでよいか、漢方で対応するか、睡眠薬を用いるかなどを判定します。
そして、治療手段のなかでも睡眠薬の選択は特に重要です。当院ではベンゾジアゼピン系薬剤という依存や認知機能低下を起こしうる睡眠薬や抗不安薬をほとんど用いません。現行の薬剤には、オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン作動薬という依存性や認知機能低下などの問題がない睡眠薬がございますので、病状に合った薬剤選択を提案いたします。
漢方薬のなかにも不眠症の適応をもった薬剤があり、脳の興奮性を鎮めるものや、睡眠に関わる体温中枢へ働きかける要素をもつもの、心身をリラックスさせるものなどがあります。中には、栄養的な不足を見抜いて使うものまであります。漢方薬は大変奥深く、正しく運用すれば強力な味方になってくれます。
「不眠」の特徴をしっかり把握することで原因となる疾患が見えてくることもあるため、たとえ軽い「不眠」でも簡単に考えるわけにはいきません。そのため、「不眠」は精神科・心療内科の治療目標の中でも最重要なものであると言っても過言ではないでしょう。