漢方内科
漢方内科
漢方内科は、主に漢方薬を使用して、様々な症状や病気を治療する診療科です。漢方医学は、西洋医学と異なる診断や治療の枠組みを持っているため、通常の血液検査や画像検査で診断がつかなかったり、現代医学の治療だけでは改善しにくかったりする症状でも対応できるという特徴があります。端的に言えば、西洋医学は病気の原因にアプローチするのに長けており、漢方治療は病気が生じさせた体のコンディション(病態)を治療目標としています。
また、病気が明確になる手前の病態として「未病」という考え方があり、「未病」の段階で漢方治療を行うことで精神・身体疾患の明確な発症を回避するという予防医学の側面もあります。
そのため、漢方治療は内科、精神科、婦人科、皮膚科、泌尿器科、整形外科など、診療科目の区別なく全身の症状を対象としており、コロナ後遺症にも対応いたします。西洋医学的に原因がはっきりしない、西洋医学的な治療で症状が改善しないなどのお悩みがある方はぜひ一度ご相談ください。
※当院では、保険診療で扱えるエキス製剤・顆粒・丸剤・粉末で治療を行っております。現在のところ、自費診療や生薬の調合は対応しておりません。
※症状・経過に応じて、漢方治療に先立って専門の診療科で精密検査をお勧めすることがあります。
漢方の診察は、望・聞・問・切という手技により所見を集め、漢方薬の決定に必要な証を判定します。簡単に言えば、望は視診、聞は聴診(嗅ぐも含む)、問は問診、切は脈診と腹診のことです。決まった手順で診察し、詳細な問診で症状や生活(睡眠・食事・排泄・月経など)について詳しくうかがうことが東洋医学的なアプローチの基本となります。そして心身のバランスの乱れを見抜き、その状態を改善する漢方薬を選びます。また、症状に悪影響を及ぼしている生活習慣があれば、改善に向けた生活指導も行います。
上記症状など、心身の不調に心当たりがある場合や気になることがございましたら、何でもお気軽にご相談ください。
適応反応症、自律神経失調症、ストレス性消化管機能異常、不眠症、神経症、イライラ、ボーとする、頭痛、腹痛、動悸など、その他数え上げればキリがないほど応用の幅は広いです。
私たちの脳のネットワークでは、ストレスがかかるとグルタミン酸が過剰に放出されて心身のストレス応答が始まります。その結果、グルグルと嫌な出来事について考えて眠れなくなり、不安感や抑うつ感が出現し、食欲低下や動悸などの身体的な反応も現れます。
残念ながら、この病態に対して西洋薬はほとんど対応できていませんが、東洋医学・漢方治療の中にはしっかりとしたノウハウがあります。何と、漢方薬の中には、ストレス病態の悪循環の根源であるグルタミン酸伝達を調整する役割が基礎実験で確認されているものがあり、人体においても長い歴史と現代医学の中でその効果が証明されています。どの漢方薬が合うかは本当に人それぞれ異なるため、きちんとした診断・治療の技術が求められます。何事も対処が早い方が結果を得られやすいものです。何らかのストレスに心当たりがある方は気軽にご相談ください。
長年漢方治療にあたってきた所感のひとつとして思うのが、漢方治療は本当に女性の味方です。しつこい冷え・のぼせ、ホットフラッシュに悩まされていた方、月経周期による気分・体調の変動に苦しんでいた方、その他様々な不調が漢方治療の目標となります。また、月経や更年期に関連した不調の背景には、うつ病と類似した病態が隠れていることがありますが、西洋薬を用いる前に漢方治療で安定が得られることもあります。結果的に必要であれば西洋医学の治療薬も用いますが、やはりそこに至るプロセスで得られる納得感が違います。当院では、状態・時期・天候によって細かく漢方薬を変更しますので、体質に合った漢方治療を提供いたします。また、便通異常は精神症状や肥満・代謝異常とも関連が深く、便秘を改善することで精神や身体にプラスの変化(不安の改善や体重コントロールなど)が得られることもあります。
コロナ後遺症の治療では本当に漢方を学んでいて良かったと実感しています。大きな社会問題となったコロナ感染と後遺症でしたが、急性期にも後遺症にも漢方治療は大いに役立ち、多くの臨床報告・エビデンスが蓄積されました。コロナ後遺症はサイトカインストームという免疫系の乱れが起点となって症状が出現することが分かっており、漢方治療は抗炎症や抗血栓・血流改善の面で役立つと想定されています。さらに驚くべきことに、伝統的な治療手順に従って選択した処方が、まさにコロナ後遺症の病態に合うエビデンスを持っていました。治療には時間がかかることが多いですし、場合によっては西洋薬を併用した方が良い時もありますが、漢方治療なしでコロナ後遺症に対応するのは難しいです。お困りの方はぜひご相談ください。
過敏性腸症候群(便秘・下痢の交代や反復)や機能性ディスペプシア(胃の機能異常)、食欲低下、胃酸の逆流、腹部膨満感、ガス腹、便秘症、下痢症など、こちらも数多くの病態が漢方治療の目標になります。漢方治療の基本はまず脾胃(胃腸)を高めるところにあります。どんなに良い治療薬・漢方薬を用いても吸収されなければ効果を発揮できません。実際に、うつ病治療中の方の慢性的な下痢を漢方治療で治した結果、日常生活の活動性が大きく改善した方をよく覚えております。漢方の基本であり、西洋医学の補助的にも有用なことがございます。
肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧症の複合病態であるメタボリックシンドロームは、集積して存在すると生活習慣病としての危険性が高まり、ときに重大な合併症を引き起こし、死に至る場合もあります。一方で、メタボリックシンドロームは可逆性という一面も有しています。判定基準により判定し、早期から未病の段階で治療介入ができれば、動脈硬化性疾患に発展する危険性は大幅に減少する可能性があります。メタボリックシンドロームへの対処は、食事療法、運動療法、ストレスの軽減を目的とした生活が基本になりますが、漢方治療によるサポートが有用なことがあります。具体的には便通異常や代謝促進の観点で用いる漢方薬を用いることが多いです。特に便通異常は精神症状との関連も深いため重要な視点です。
耳鳴り・めまい、排尿異常、腰痛、肩こり、皮膚トラブル、フレイル(高齢者の回復可能な虚弱状態)なども日常的に漢方治療で対応しております。是非とも気軽にご相談ください。