精神科
精神科
精神科は、脳機能に何らかの問題が生じることにより出現する精神的な症状や心の問題を専門に診療する医療分野です。
取り扱う疾患は、適応反応症(適応障害)、うつ病、双極症、不安症、統合失調症、神経発達症などがあります。病態としてみると、ストレス反応が悪循環して心身不調が生じた病状、ストレス以外の要因もあって脳機能が深刻に低下した病状、持って生まれた特性と環境のミスマッチが起こりやすい病状などに分かれます。
現代社会では日常生活におけるストレスや不安、抑うつなどが増加しており、精神疾患のリスクを抱えた方が多くいらっしゃいます。そして、ちょっとした不眠や不安、軽い体調不良が上記のような精神疾患のきっかけになり、社会的な危機に発展することもまれではありません。
当院精神科では、まず、適切な早期介入・早期治療により深刻な問題に至る前に病気の進行を止めることを目指します。もし、何らかの精神疾患の発症が見込まれる場合は、国内外のガイドラインや研究をもとに治療を行うことで皆様の健康をお守りいたします。
精神科でよく見られる症状や相談には、次のようなものがあります。
精神科では、さまざまな精神疾患を診療します。以下は、主な精神疾患の概要です。
なお、不眠はほとんどの精神疾患と関連するため疾患として説明いたしません。不眠については、「お悩みから探す」の「眠られない」のページにて解説いたします。
ストレスに反応して心身の不調が出現する状態があてはまります。抑うつ感や不安感・イライラ感、意欲の低下、集中力の低下、疲労・倦怠感などのうつ病と重なる症状から、頭痛、腹痛・下痢、便秘、めまい、腰痛、耳鳴りなどの身体症状まで人それぞれ幅広く多彩な状態象を呈します。うつ病との見分けがつきにくく、不必要な抗うつ治療が行われることもありますが、逆に実際にうつ病に発展することもあるため、経験豊富な精神科医による治療が必要です。
うつ病は、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失が特徴です。不眠、食欲不振、疲労感、集中力の低下などの身体的症状や認知機能の低下も伴います。原因はセロトニンやノルアドレナリンやドパミンなどの神経伝達物質の低下によると考えられており、同時に認知機能障害が生じることもわかっています。日常生活に大きな支障をきたすことが多く、早期の治療が必要です。抗うつ薬による薬物療法と休養の両方が大事です。
また、女性の月経に関連した不調のなかでも、月経前不快気分症は精神医学的にはうつ病に類するものと位置付けられています。月経周期によるエストロゲンレベルの低下が結果的にセロトニンレベルの低下や不安の経路の不安定さを招くため、うつ病に準じた治療を行う必要があるからです。産後うつ病や月経前気分不快症は、典型的なうつ病よりも過剰なイライラ感が目立つことがよくあり、子育てや夫婦関係に影を落とすことが多いです。治療により本来の人格・人間関係を取り戻していただければと思います。
双極症は、躁状態と抑うつ状態など気分の変動が出現する病気です。背景には概日リズム(24時間周期の睡眠覚醒リズム)の問題が指摘されるため、気分変動と同時に睡眠の把握を行う必要があります。躁状態は過覚醒を強制されるイメージとなり、睡眠時間が短縮して活動性が高まります。その程度は、いつもより少し元気なぐらいから、明らかに気分が高揚して多弁・多動、イライラ、浪費が目立つ状態まで幅があります。一方、うつ病相は冬眠を強制されるイメージです。眠気・だるさ・おっくうさを体験しやすく、活動性が極端に低下することが多いです。睡眠状況は過眠になりがちですが、眠気が強いだけで実際にはほとんど寝た気がしないという方も多くいらっしゃいます。近年、新しい治療手段として持続性注射剤が登場しており治療の進歩に注目が集まります。
パニック症は、突発的(数分以内)に強い不安や恐怖に襲われ、動悸や息切れ、嘔気、めまい、などの身体的な症状も出現します。このようなパニック発作(不安発作)が不意に襲ってくるため、その出現に怯えて生活することになり、日常生活が送れなくなります。なるべく早急にきちんとした治療が必要です。その原因は、大脳辺縁系にある海馬や扁桃体という記憶や情動(不安・恐怖)に関連した部位の誤作動と想定されています。脳内セロトニンレベルの低下が見込まれており、うつ病と共通した要因を持ちます。そのため、中等症〜重度の場合は抗うつ剤による治療が必要なことが多いですが、軽度〜中等度であれば漢方治療と認知行動療法を元にした心理教育でコントロールできることもあります。
人前での談話や初対面の人とのやりとり、食事などの場面などで強い不安感が出現します。また、後になって自分の言動がおかしくなかったか過剰に気にする症状もあります。これもパニック症と同じく不安に関連した回路の誤作動が想定されており、治療もパニック症と共通する部分が多いです。
強迫性障害は、過度な手洗いや確認行動など、無意味だと分かっていても繰り返してしまう行動が特徴です。この症状は、本人にとって大きな苦痛を伴います。また、身近な人が確認に巻き込まれて影響を受けることもあります。自力でコントロールすることが難しいことが多いため、専門的な治療が必要です。原因は他の不安関連疾患と重なる部分が多いですが、成り立ちはやや複雑であるため治療には経験を要します。
注意欠陥多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)があります。ADHDでは会議に集中できない、仕事の手順がうまくできないなどの症状があります。ASDは周囲の空気が読めない、ズレた言動をしてしまうなどの特徴があります。LDは書字や計算が極端に苦手ですが本来の知的能力には問題はなくむしろ他方面の機能が高いこともあります。また、いくつかの神経発達症が併存することもありますので、まずは適切な診断が大事です。治療には時間がかかることが多いですが、根気よく脳病態に合った治療を続けることで改善が得られます。
統合失調症は、幻覚や妄想を引き起こす精神疾患です。例えば、存在しない声が聞こえる幻聴や、他人が自分を害そうとしていると信じる被害妄想などがあります。以前は精神科病院での入院治療を要することが多かったですが、近年は治療法の進歩により通院治療で対応できる方が増えているように思います。原因には過剰なドパミン分泌が想定されており、治療は抗精神病薬というドパミン遮断作用がある薬剤を用います。特に再発予防が重要です。